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カーラジオの情報を聞きながら俺は携帯端末で道路の混雑状況を確認する。
今日は第一候補のここを見たら帰りだなと思う。
コインパーキングに車を入れて二人で海岸に出る。
冬の午後の海は風が強くひとけが少なかった。
まばらにいるのはサーファーと季節外れの観光客だろう。
「夜光虫の性質から時間は深夜、日中晴れていて気温が高く赤潮が出ていることを確認しておくこと」
「18歳になった主人公が初めて夜のドライブデートをしてヒロインの言うキラキラが運良く二つ見れるロマンチックでドキドキさせるシーンだ。どうだね?」
「どうだねって、現実は作り物よりドキドキはしないだろう。自動車運転初心者の夜間の長距離走行はドキドキするだろうけどね」
「俺若い頃夜光虫見る夜のドライブデートした事があってさ、健康的なガールフレンドだったから"眠い!"って最初から不評で、おまけに他の夜光虫目当ての人は沢山いるし、ぶっちゃけ凄く生臭いのな夜光虫の見える海って」
「赤潮のせいだな。生き物の匂いだよ。生きて死ぬ海の匂い」
「現実はロマンチックにはほど遠くなるだろうけど、作り上げてやるよ、とびきりロマンチックで胸が締め付けられるようにときめく画を撮ってやる」
「頼もしいね」
金属音が響いて南が煙草に火をつけたのを知った。
「今日はもう他は回れないだろう、帰ろう。日が暮れる。」
南は紫煙を吐き出し。
「そうだな、でももうちょっと付き合ってよ」
指先にくゆる煙草、風に煽られた髪の毛、どこか憂いの含んだ流し目でうったえた。
つい俺は行き先も聞かず再び車に乗った。
早い冬の夕暮れ退社時間には早いだろうに道路は混雑しはじめていた。
夕闇にテールランプがうるさい。行き先は横須賀のようだった。
横須賀の寄港してる空母が見れる場所。
駐車場からの道すがら自動販売機で暖かい飲み物を買った。カイロがわりに握りしめ、昼出てきた格好が少し薄手だったと後悔する。
「"彼女"が来ているのを思い出してさ」
視線の先空母のシルエットが浮かび上がっている。
「何か、艦載機乗ってないか?」
「乗ってるな」
この男の何のスイッチを押したか海風で冷えるなか男二人で空母鑑賞とは
「何か不満か?」
「あえて言うなら日中誘ってくれ、寒い。」
「彼女は芸術的なまでに美しいだろ」
人の話を聞けよ。まぁ、確かにメカのシルエットに当たる光源の明暗は美しい。あれ、こいつ
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