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……カラン、カラン…!
ドアに付けられた鐘の音が、またも騒がしく店内に鳴り響いたのだった。
「…?」
慌てて二人がそちらへ顔を向ける間もなく、若い女性の弾んだ声が聞こえてくる。
「ウォーリー、また物ブツを売りに来たわよ!」
見ると、それは美しく長いブロンドの髪に、キラキラと光る青い目をした一人の可愛らしい娘だった。
歳は20代前半…いや、あるいはまだ10代かもしれない。赤のセーターにデニムのミニスカートを穿き、白い膝丈まであるウールのオーバーコートを羽織っている。
「あら? 他にもお客がいたのね」
ドアを開け放った勢いのまま、娘は一直線にカウンターへ向かおうとしたが、予想外に刃神の姿を見ると、その場に立ち止まる。
「……ま、いいわ。ちょっと失礼するわよ。さ、ウォーリー、早く見てみて!」
だが、すぐに再び動きだし、やはり、ものすごい勢いでカウンターへと突進する。
「今回はなかなかいいものが手に入ったわよ。さすが貴族のお城!ってとこね」
そして、ポケットから取り出したハンカチの包みをカウンターの上に置くと、すぐさまそれを開いて見せた。中から現れたのは真っ赤なルビーの付いた銀の指輪である。
「ま、今回のお宝のほんの一部だけどね。とりあえず、これだけ売ることにするわ。ビクトリア朝時代のものよ。たぶん3カラットくらいはあるだろうから、それなりにいいお値段にはなると思うんだけど…」
「おい、ちょっと待て! 先客は俺だぞ!」
なんだか知らないが突然現れた上、自分を差し置いて、早速、商談に入ろうとする娘に刃神は文句を付けた。
「わかってるわよ、そんなの言われなくても。でも、あたしの用はすぐにすむから、ほんの少しだけ待ってて」
しかし、刃神のことなどまるで構う様子もなく、娘は笑顔でそう答え、老主人の方へ向き直る。
「な……ったく、礼儀を知らねえ小娘だな。俺が話してるとこに割り込むなんざいい度胸してんじゃねえか…ってか、見たところ小娘のくせに盗人のようだが、もし俺が一般人の客だったらどうする?お前の正体ばかりか、この店の秘密までバレちまうんだぞ? ちったあ気を付けろ!」
その態度にさらに苛立ち、柄にもなくお説教をする刃神だったが。
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