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亡国の落し子
ある国があった。
神が在り、王があった。王があり、民衆があった。人々は一つの秩序のもとにあった。
崇め奉られたるは善の神。召し上げられたるは善の人。善く生きた人の善く生きる子。王は人々を善く導いてきたはずだった。今はもう、失われてしまったが。
貶められたるは悪の神。蔑まれるのは悪の子。罪を犯した悪の人。一族郎党、永久に、国の敵となる人々。今はもう、その罪すら忘れ去られてしまったが。
そのようにして在った国の話。今はもう、自らの重みに耐えきれず、押しつぶされてしまったが。
善の人同士の子は善の子。悪の人同士の子は悪の子。では、善の人と悪の人の子は?
稀にある魔が差した子。亡国の落し子は、その有り様を探し求めている。
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