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小学生の頃のM君は、学校が終わると自転車であちこちに出かけ、友だちと遊ぶ毎日を送っていた。
その日、自転車を走らせていたM君は、交差点の歩道の隅にサッカーボールがひとつ、転がっているのを見つけた。
赤と銀のデザインの、古びたボール。
道路向こうの公園から、転がってきたのだろうか?
車の往来も多い場所だからこのままにしておいても危ないと思い、M君はボールを拾って自転車のカゴに入れると、友だちが待っている公園を目指した。
公園には既に、何人かの友だちがベンチの周りに集まっておしゃべりをしていた。
「おおーい」
M君は彼らから少し離れた場所に自転車を止め、カゴから先ほど拾ったボールを取り出した。
傷んだボールだから水でも含んでいるのだろうか。学校のサッカーボールより若干重く感じたが、気にせずM君は友だちのいるベンチに向かってボールを思いきりキックした。
放物線を描いてベンチを目がけ飛んでいくボールを、当然誰かが受け止めてくれるだろうと思っていたら
「うわぁぁぁぁぁ━っ!!」
みな一斉に血相を変えて、ボールから逃げ出していくではないか。
無人になったベンチのそばに落ちたボールは、そのまま植込みの奥に転がっていってしまった。
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