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「夜中に風呂場へ……? 何だよそれ、気味悪いな」
夏季特別講義を一緒に受けているマツモッフィーが、昨夜の話を聞いて呟く。
「……で? 渡邊さんに連絡入れてみたわけ?」
「さっきの事だし、連絡なんて入れてないよ。入れるつもりもないし」
「なんだよ、つまんないな。確かに変わった子ではあるけど、見た目は悪くないんだからさ。もったいないだろ」
確かに綺麗な人ではあった。しかし自分はどうしても、夜中に真っ暗な浴槽に座りこみ、爪を噛んでいる姿が忘れられなかった。あんなものを見た後で、まだ付き合いたいと思うほど広い心も卓越した感性も持ち合わせていない。
「それよりも、そっちはどうだったのさ。特に、ゆー君は進展あったの?」
「あー……それがさぁ……」
溜め息をつく辺り、満足のいく結果にならなかったのは予想が出来た。
「カラオケに行くまではよかったんだけどさ、2人ともトイレから戻ってきたかと思いきや突然『用事が出来たから帰る』なんて言いだしてさ」
「用事? 何の?」
「知らないっつの、そんなの。でもよっぽどの事なのかなと思ったよ、2人共顔面真っ青になっててさ。なんつーか、まるで――凄い恐い体験でもしたかのような感じだったな」
「恐い体験…………」
まさに昨夜、自分が受けた事である。
とはいえ、あれだけ自分が気を利かせたにも関わらず成功しないとは。情けないヤツらだ。
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