52人が本棚に入れています
本棚に追加
なんとか目的のコロッケを購入し、自分はアパートへと戻ってきた。
扉に鍵を差し込み、回す。だが開かない。
何故だろうと思い、もう1度鍵を回すと扉は開いた。どうやら最初から鍵がかかっていなかったようである。
「おっかしいな。確かに今朝、鍵をかけて出たはずなんだけど」
玄関へと入り、目線を靴箱に向ける。するとそこには――
人形のついた鍵があった。いつもの場所に、さも当然のように。
「……あれ? なんだよ、今朝見つからなかったくせに今頃見つかるなんて」
だがこれでスペアキーを作る事もなくなった。無駄な出費をおさえられたのだからOKとしよう。
「ただーいまっと。さて、メシメシっと」
一人暮らしをしていると、何かと独り言を呟くようになる。自分では感じないが、心の奥底で寂しいという気持ちがあるのだろうか。それを紛らわす為に独り言をしてしまうのか。よく分からない。
購入したコロッケは、まだ温かい。冷蔵庫の中で保管しておいた冷や飯を茶碗に移し、電子レンジへぶちこむ。
5個あるコロッケの内、1つを手づかみでかぶりつきながらテレビのリモコンを探す。そんな時
――――ピンポーン……
不意に、自分の部屋の呼び鈴が鳴り響いた。
もしかしてマツモッフィーか? それとも、ゆー君でも来たのだろうかと思いつつ覗き穴に顔を近付ける。
だが、そんな自分の予想は外れてしまう。部屋の外にいた人物、それは――
「――――渡邊さん……?」
最初のコメントを投稿しよう!