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1~2分程経過しただろうか。電子レンジに入れていた冷や飯が温め終了の合図を出す。
すると渡邊さんは突然立ち上がり、じっと何かを見つめ続けた。
……それはテーブルに置かれた自分のPHS。
彼女が言わんとしている事に気付き、自分は焦った感じで口にした。
「あ、手紙ありがとね。連絡しようと思ったんだけど講義が忙しくて、さっき帰ったばかりなんだ。講義室って電話の電源切らないといけないしさ」
まくしたてるように告げる。すると渡邊さんは自分のPHSを手に取り、ボタンを押し始めた。
するとどこかからピリリリというアラーム音が聞こえた。渡邊さんの携帯が鳴っているのである。
「あ、番号入れてくれたんだ。ありがとう」
必死に笑顔をつくりながら、お礼を告げる自分。すると再び渡邊さんの指が動きだす。
「……すみません、メールアドレスをメモに書くの忘れていました。本当にすみません」
登録を終えた渡邊さんは、自分のPHSを元のテーブル上に戻して、フラリと玄関へ向かう。
一瞬、開けっ放しになっている浴槽の様子を窺いながら……
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