2001年8月9日

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「忘れ物も、見つかったんだよね? わざわざメールアドレス登録してくれてありがとう。あんまり慣れてなくてさ、助かったよ」 まくしたてるように言う自分。早く帰って欲しいという思いが気を早らせている。 だが不思議にも思った。忘れ物を取りに来たはずなのだが、それを発見した様子がないのだ。 もしかしたら初めから、電話を鳴らしてくれない自分の様子を窺いにきたのかも、と勘繰ってしまう。 「……食事中に失礼しました」 ぼそりと言い、渡邊さんは部屋から出ていった。 しばらくの間、自分は玄関から動けないでいた。そして渡邊さんから感じる不気味な雰囲気の理由が1つ分かった気がした。 彼女は――まばたきをしない。 こちらを見ている時など、大きな目でじっと見つめ続けてくるのだ。 そして一切の表情をつくらない。まるで能面のような無表情。せっかくの綺麗な顔立ちも台無しのように感じる。 「……参ったな……」 ぼそりと独り言を言った時、突然PHSから着信音である『君をのせて(天空の城ラピュタ)』が鳴り響いた。 (ちなみに、この頃の携帯は着信音ダウンロードなどなかったので、全て自分で手作業で着信音を作っていた)
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