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私の実家は、個人経営の商店「かわい商店」をしている。 もとは父方の実家で、祖父の代から経営していた店なのだが、祖父母に続き、店を継いだ父も早くに亡くなった後は、しっかり者の母が女手一つでこの店を支えている。 今回連絡をくれた翔真のおばさんもよく買いに来てくれるお客さんの一人だし、さらに隣である翔真の家も小さな文房具屋「牧田文具店」を営んでいるものだから、ちょっとした食べ物と日用品はうちで、文房具は翔真の家で買って帰る、というルートが近所では出来上がっているほど。 そんな良立地に恵まれ、常連客は少なくはないのだ。遠くのスーパーやコンビニへわざわざ自転車こいで行くくらいなら、ここで済ませてしまうご近所さんも多い。 なにより、母の気風の良い性格が地元の人に愛されていて店は大体明るい声に包まれている。 私のようなあがり症で恥ずかしがりの娘が生まれてしまったのか。そういうところはミキの方がお母さんに似ているんだろうな。 やっと到着。 住宅街にしてはまあまあ往来がある道路沿いに建つ瓦葺の古い民家風店舗。ここが我が家だ。 一階の道路隣接部分を改築して店舗スペースにしていて、店舗から入り、中ほどにある暖簾をぬけると我が家の生活スペース兼2階部分に入れる、という田舎の個人商店によくある仕組みになっている。 「あれっ」 しかし今日は実家のシャッターが閉まっている。シャッターには「都合により本日休業します」の貼り紙。この達筆具合はお母さんの字じゃない。翔真のおばさんだ。 お母さん、どうしたんだろう。どこかに出かけてるのかしら。 隣のをちらっと見やると牧田文具店は通常通り営業中のよう。 そちらに足を向きかけたが、もし、翔真がいたら気まずい。 私はスマホを取り出し、おばさんに電話をかけて呼び出すことにした。
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