39人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
――ガンッ! ガンガンッッ!!
音は鳴り響き続ける。外は既に暗い。こんな騒音を出していれば、普段なら近隣の住人が文句を言ってくる所だが――
今は夏休みの真っ盛り、このアパートに残っている住人など、ほとんどいやしない。
「なんなんだよ……! なんなんだよッッ!!」
続けて聞こえて来たのは、玄関扉に設置されている投函口。そこをガチャガチャを開けたり閉めたりする音……!
この扉を、どうにかして開けようと試みているのだろう。自分は警察を呼ぼうかと思ったが、自宅電話の回線を外している事に気付く。
メールが届くようになった日頃から、度々無言電話が相次いでいたのである。もしかして渡邊さんかと思った自分は恐くなって回線を外していた。
もし回線を繋いだ時、渡邊さんから電話があったら……そう思うと、なかなか行動に踏み込めない。
しばらくは耳を塞いでやり過ごした。すると5分程して物音は聞こえなくなっていた。
(……消えた……のか……?)
恐る恐る玄関扉に近づき、覗き穴の先を見てみる。そこで見えたものとは――
「――――――ッッ!!!」
じっと、向こう側からこちらを覗く渡邊さんの姿……!
混乱する自分の脳裏に、再び「ガリガリ、ガリガリ」という例の音が聞こえてきた――
最初のコメントを投稿しよう!