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ヤマさんに相談をしてみた。スーパーで起こった事、扉を叩き続けられた事、メールの内容、全部……
真剣に聞いていたヤマさんは突然立ち上がり、玄関扉を調べ始める。
「……確かに蹴られたような跡があるな。これは警察に連絡したほうがいいんじゃないか?」
「う、うん……」
ヤマさんは持っていた携帯を渡してくれた。110をプッシュし、警察に事の顛末を説明する。
『実際に何か被害を受けられたわけではないんですよね? 物を盗られたとか傷付けられたとか。現段階で警察が動く事は出来ません。相手の女性とよく話し合って、解決してください』
冷ややかな対応。無理もない、この頃はまだストーカー法など制定されておらず、こんな事を話しても男女関係のもつれぐらいしか思ってくれなかった。
『まぁ何かありましたら向かいますんで』
あまりにも適当な対応に苛立ちつつ、しかし心のどこかでは「やっぱりな」という気持ちもあった。
「どうする? しばらく俺のアパートに身を隠すか?」
そんな優しい言葉をかけてくれるヤマさん。だが丁重にお断りした。
そこまで迷惑かけられないというのもあったし、何より逃げているだけでは解決しないだろうと考えたのだ。
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