94人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
理恵さんはどうやら図書室を出ていったようだ。
えっと、えっと。
理恵さんは、先生のことが好きだったけどあきらめて西くんと付き合っていた。
だけど部活の講師にその人が来て、やっぱり好きだ、と。
ふむ。
最初の西くんが人気者の件はなんだったの?
「あいつさ、……理恵。言い訳しがちな奴なんだよ」
私の心の中の疑問が聞こえたのか、西くんがため息交じりにそう言った。
「すーぐ、“だって”とか“でも”とか言ってさ、必ず最初は言い訳すんの。……俺的に、そんなとこも好きだったんだけど、」
言いながら私の隣まで歩いてきた西くんを見上げたら、いつも笑って細まる瞳が滲みキラリと光る。
「三好サン。……俺、……振られちゃったわ」
西くんはゆっくりお辞儀をするように体を倒し、私の肩先におでこを載せた。
「いやぁ、実はちょっとわかってはいたんだけどなー」
至近距離で聞こえる声は鼻声だ。
「部活に積極的に行きだしてさ、態度とかも変わってきてさ。元に戻ればいいと思って部活終わるの待ってたりもしたんだけど……」
「っ、」
「ダメだったな。……ハハッ」
西くん。
私も泣きそうです。
理恵さんのこと、本当に好きだったんだね。
辛いよ、ね。
切ないなぁ。
私ができることは、これくらい。
腕を持ち上げて、目の前にある西くんの肩あたりをポンポンとした。
ズズッと鼻をすする音がする。
「西くん、鼻水つけないでね?」
「……っ、あははっ」
肩が軽くなって、西くんが体を起こしていく。
うつむいた顔を背けてササッと顔を拭ったとき、図書室のドアが勢いよく開いた。
本日2回目。
もっと静かに開けたらいいのに。
ドアを開けた勢いのままつかつかと歩いてきたのは奏太。
「こら、西。お前はっ、」
そう言いかけた奏太を押しのけて、私の目の前に女の子が飛び込んできた。
「三好先輩。どういうことですか!?」
ものすごい形相で私を睨んでいる。
え、今度は私の番?
っていうか、何?
よくよく見たら、昨日奏太を迎えに来た後輩さんだった。
昨日の事も思い出し、眉が寄る。
昨日の今日だが、あなたは私の中で知らない人カテゴリーに分類されてますから。
だから。
「どうもこうも、あんた、誰」
これ位、言っていいよね。
最初のコメントを投稿しよう!