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理恵さんはどうやら図書室を出ていったようだ。 えっと、えっと。 理恵さんは、先生のことが好きだったけどあきらめて西くんと付き合っていた。 だけど部活の講師にその人が来て、やっぱり好きだ、と。 ふむ。 最初の西くんが人気者の件はなんだったの? 「あいつさ、……理恵。言い訳しがちな奴なんだよ」 私の心の中の疑問が聞こえたのか、西くんがため息交じりにそう言った。 「すーぐ、“だって”とか“でも”とか言ってさ、必ず最初は言い訳すんの。……俺的に、そんなとこも好きだったんだけど、」 言いながら私の隣まで歩いてきた西くんを見上げたら、いつも笑って細まる瞳が滲みキラリと光る。 「三好サン。……俺、……振られちゃったわ」 西くんはゆっくりお辞儀をするように体を倒し、私の肩先におでこを載せた。 「いやぁ、実はちょっとわかってはいたんだけどなー」 至近距離で聞こえる声は鼻声だ。 「部活に積極的に行きだしてさ、態度とかも変わってきてさ。元に戻ればいいと思って部活終わるの待ってたりもしたんだけど……」 「っ、」 「ダメだったな。……ハハッ」 西くん。 私も泣きそうです。 理恵さんのこと、本当に好きだったんだね。 辛いよ、ね。 切ないなぁ。 私ができることは、これくらい。 腕を持ち上げて、目の前にある西くんの肩あたりをポンポンとした。 ズズッと鼻をすする音がする。 「西くん、鼻水つけないでね?」 「……っ、あははっ」 肩が軽くなって、西くんが体を起こしていく。 うつむいた顔を背けてササッと顔を拭ったとき、図書室のドアが勢いよく開いた。 本日2回目。 もっと静かに開けたらいいのに。 ドアを開けた勢いのままつかつかと歩いてきたのは奏太。 「こら、西。お前はっ、」 そう言いかけた奏太を押しのけて、私の目の前に女の子が飛び込んできた。 「三好先輩。どういうことですか!?」 ものすごい形相で私を睨んでいる。 え、今度は私の番? っていうか、何? よくよく見たら、昨日奏太を迎えに来た後輩さんだった。 昨日の事も思い出し、眉が寄る。 昨日の今日だが、あなたは私の中で知らない人カテゴリーに分類されてますから。 だから。 「どうもこうも、あんた、誰」 これ位、言っていいよね。
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