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暖かいな、って思った。
体もそうだけど。
心が。
ギュッと胸が苦しくて、きゅんとしていて。
でもなんだか安心もできて。
人を好きということがどういうことか。
ただ嬉しいのと違う、ただ抱きしめられているのと違う、この行為には好きというより愛があって、それが二人をぐるりと覆うように包んでいて。
それは、甘くふわふわと、ピンク色の、
「わたあめみたい」
「……はるかが?」
私がというより、
「この空気が」
「んー、」
唸った奏太は私の首元に顔をうずめて深呼吸する。
「はるかがわたあめだろ。甘い」
「えー?奏太も甘いよ。今日はあの子のおかげでいつもよりもっと甘く感じる」
「でもはるかよりはマシ」
「ううん。わたあめより甘いと思う」
「そんなに?じゃあ……俺はハチミツってところだな」
「わたあめにハチミツ?」
「べとべと」
「その言い方やだ」
「激甘」
「うん、それ」
この人と、奏太とずっと一緒にいたいなって、思う。
ずっとずっと。
『わたあめにハチミツ』でいられたらいいなって、思うんだ。
「俺、結婚してもこの関係のままでいられる自信、あるよ」
結婚してもって……え、誰と?
「はるか以外いないからね?なにきょとんとしてんの」
「え、だって」
「何。はるかは俺と結婚するつもりないの?」
「え。は?するつもりもなにも、まだそんなこと、考えたことも……」
「ずっと一緒にいたいって、思わない?」
「それはついさっき思ったばっかりだけど、」
「ならそういうことでしょ」
……なら、
そういうこと、か。
腕を緩めた奏太は私をのぞき込みじっと見つめる。
「予約したから」
「……うん、」
私たちはまだ学生で、この先どんなことが待っているかわからない。
だけど。
私の心の、未来のページの一部には。
しっかりと、“予約済み”の文字が刻み込まれて。
重なった唇は、わたあめにハチミツをかけた以上に、甘かった。
~fin~
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