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「この度は、あの……これはつまらない物なんですが……」
頭を下げながら菓子折りを手渡そうとする大家。
青木を下がらせて、ヤマさんが大家の前に立つ。
「理由も分からないまま、こんな物を頂くわけにはいきませんね。正直に話してもらいましょうか」
大家の顔色は真っ青だった。ますますもって只事ではない事を理解するヤマさん。
大家は目線をあわせないまま、震える声で告げた。
「あの……アパートの貯水場で少し……問題が……」
「問題? 何の問題ですか」
「あの……こ、これは絶対に人に言わないで欲しいというか……」
「さっさと言えッ!!」
キレてしまったヤマさんが怒鳴りつける。
「アパートの屋上に……給水タンクがあるんです……そこの水が蛇口から出てくる仕組みなんですけど……」
「はぁ? 聞いた話だと、ここのアパートの水は井戸から汲みあげたものだと……」
「それは違います……そんな事はしていません……」
とんだデマだった様子。チラリと後ろにいる青木に目線を向けると、ショックを受けた彼の様子が見えた。
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