2ケツ

7/10
前へ
/23ページ
次へ
彼女の特徴を聞く事は出来なかった。 一致してしまう事が怖かったのである。 そして、もう1度江崎と出会った2日前を思い出す。 ……あの時、自分は違和感を抱いたのだ。 普通、バイクで2ケツを行う時は運転している人の肩や腰に手を回すものだろう。 しかし、あの時にみた女性は違っていた。 江崎の後ろから……両手で首を掴んでいたのである。 会釈をしても無視されたのだって、今となれば納得がいく。 2ケツでノーヘルメットにも関わらず、他の人達が誰も訝しげな顔をしていなかった事にも合点がいく。 ……ちゃんと、この事を話すべきだろうか? いや、話した所で何になる? 余計に彼を苦しませるだけじゃないのか? 浮気の報復と考えれば、当然の報いかもしれない。 だが人生において1度や2度くらい過ちを犯すものじゃないだろうか。 彼は今、十分に反省をしている。そして後悔をしている。 これ以上、傷口をえぐるような真似はしたくない…… そう考えた自分は、やはり何も言えなかった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

44人が本棚に入れています
本棚に追加