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彼女の特徴を聞く事は出来なかった。
一致してしまう事が怖かったのである。
そして、もう1度江崎と出会った2日前を思い出す。
……あの時、自分は違和感を抱いたのだ。
普通、バイクで2ケツを行う時は運転している人の肩や腰に手を回すものだろう。
しかし、あの時にみた女性は違っていた。
江崎の後ろから……両手で首を掴んでいたのである。
会釈をしても無視されたのだって、今となれば納得がいく。
2ケツでノーヘルメットにも関わらず、他の人達が誰も訝しげな顔をしていなかった事にも合点がいく。
……ちゃんと、この事を話すべきだろうか?
いや、話した所で何になる? 余計に彼を苦しませるだけじゃないのか?
浮気の報復と考えれば、当然の報いかもしれない。
だが人生において1度や2度くらい過ちを犯すものじゃないだろうか。
彼は今、十分に反省をしている。そして後悔をしている。
これ以上、傷口をえぐるような真似はしたくない……
そう考えた自分は、やはり何も言えなかった。
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