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外はすっかり明るくなり始めている。
俺は警察署の玄関を潜り抜けると、振り返る事無く、真っ直ぐに前だけを見据え、歩き出した。
しかしその足は直ぐにぴたりと止まった。
先程見た、苦痛に満ち溢れる顔をしていた、清水の顔を思い出したのだ。
それはアパートに着いてからも、変わらなかった。
常に頭の中には、苦痛に満ち溢れる清水の死に顔がある。
俺はあんなに苦しそうな顔を見た事がない。
清水は余程苦しみながら、死んでいったのだろう。
それ故に、犯人の事を考えると、許せない以上の気持ちになっていく。
心がドス黒い感情に包まれる前に、俺は違う事を考える事にした。
何を考えよう。
何を考えようかを考えていると、俺達の事を考えてくれよと言わんばかりに、あごヒゲと耳餃子の顔が浮かんできた。
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