お出かけの準備

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僕は、本当につまらない、くだらない理由であいこを深く傷つけてしまった。 言葉で再構築することはできたけれど、同じ部屋にいても、言葉を交わしても、あいこに近づくことはできなかった。 あの日だってあいこは泣かなかった。それが僕には余計辛かった。顔を思い切りぶって欲しかった、怒鳴り散らして欲しかった。しかし、あいこはけだるそうに僕を許すと言っただけだった。 あいこは全部お見通しだ 昔からそうだ、あいこはよく僕を見ていた。今思うとあいこについた嘘は全部ばれていたのかもしれない。僕はバカだから、あいこの掌の上でうまく転がされていたんだ。 そうだとしても、あいこはいつも僕の世話を焼いてくれた。中学生の時も、大人になってからも、それが癖になっているかのように僕のそばにいてくれた。 そして今も、僕と同じ部屋にいて、出発の準備をしている あいこはわかっている 怒ることもせず、別れることもせず、何もなかったかのように僕と一緒にいることが、僕にとって一番苦しい事だということが。 「こんな日に化粧なんてしなくていいでしょ」 「こんな日だからだよ」 「何か持っていくものある?」 「うーん、ちょっとした飲み物と食べ物があればよくない?」 「まぁ、そうだね」 「ほんと、僕らって呑気だよねー。もうすぐ世界が終わるっていうのに」 「呑気っていうより、いきなりすぎて何もできなかったんでしょ?」 「そうなんだけどさ、両親に会いに行ったりしなくていいの?」 「あんな状況じゃ無理だったし、生きてるかわかんないから別にいい。ていうか、気が散るから話しかけないで」 「ご、ごめん」 ****************************** 「できたよー」 「じゃあ、行こうか」 「うん」 そうして僕らの、最後のお出かけが始まった
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