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「あ、たっくんここ。”ゾウさん公園”」
「おぉ、そういやここだったっけ? 全然覚えてなかった」
「嘘でしょ? たっくんが初めて私に告白した場所なのに?」
「だってあの時は振られたじゃん。嫌な思い出は抹消するタイプだし」
「そうだっけ?」
「そうだっけ?じゃないよ! もう、」
「結局、結婚したんだからいいじゃない。小さいなー」
「それは今だから言えることでしょ!? そういえば何でオッケーしてくれなかったの?」
「うーん。たっくんを男として見てなかった」
「ぐふっ。最後の最後で突き刺さるなー」
「だいぶ歩いたし、ちょっと休憩しようよ」
「ぶった切ってくるね!? わかったよ!もう」
高校2年の時、僕はあいこに一度振られている。
思春期になると僕は完全にあいこを好きになっていて、受験勉強もがんばって同じ高校に合格した。でもいろいろこっぱずかしくて、その頃はまともに話すことすらできなくなってしまった。
毎日ちらちら遠くから見るだけ。好きなことに感づかれてしまったら恥ずかしくて生きていけないと、当時は思っていた。
でも、高校2年の秋。卒業を控えたあいこに思いを伝えるため、この公園で思い切って告白したんだけど、見事に玉砕した。
ゾウさん公園と呼んでいるのは、単に大きなゾウの滑り台があるからいつの間にかそう呼ぶようになったからで、本当の名前は知らない。
”全然覚えてなかった”なんて大嘘。あんな苦い思い出の場所を忘れるわけがない。その時も「うーん。ごめん、付き合えないや」とかるーく切り捨てられてしまった。
結局、今まであいこが何を考えているのかほとんどわからないままだ。でも、そこが好きな僕は偏屈な男なのかもしれない。
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