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金曜日の夜10時を過ぎた地下鉄のホームは、夕方ほどではないが所々乗客が白線に並んで立っている。
ほとんどの人が帰宅を目的に電車を待っているのだろう。
もちろん自分もその1人だ。
少し待てば、人工的な明かりしかないこの空間に、電車が滑り込んで来る。
息つぎをするようにドアを開け、ひと呼吸してからまた次の駅まで走る姿は、まるで生きているかのように見える。
客を乗せて息を整えたら、笛の合図で再び走り出す。
朝から晩までゴーっと音を響かせて、暗い道を駆け回っている電車は目を光らせて一定方向に進んでいくのだ。
ホームに着いてから約30分。
一本、二本と電車を見送り、それでもまだ電車に乗らずにいるのは、いつもの時間、いつもの車両で逢える人がいるから…。
今日はいつもより早く駅に着いてしまった。
電車も少し空いている時間だったのだから早く帰ってしまえばよかったのに、馬鹿みたいにいつもの車両を待っている。
一本前の電車を見送って、ようやくベンチから腰を上げた。
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