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夜風に煽られ小屋の戸板がカタカタと鳴ると、カンテラの炎が遅れて揺れた。
広くはない小屋に十数人の男たちが集まり、こちらに体を向けて椅子に腰掛ける。
初めてこの場所へ連れてこられた若いマリスは唾を飲み、その居心地の悪い視線から逃げるように目を泳がせた。
時間が来ると隣に座っていた男が立ち上がり、ぐるりと彼らを見回してから「ゴホン」と咳払いをした。
「地区長は全員揃ったか?それではこれから魔法科学農業協同組合の常会を始める。今年の魔法種の販売と、田起こしの予約時期について、ーー」
資料を手に話を進めていくのはマリスの上司である、魔法科学農業協同組合ーー通称・魔学農協のブランデだ。
ブランデは美しく整えられた黒髭を時折撫で、淡々と文字を読み上げていく。
暗くて紙面が見えづらいのだろう、合図を受けたマリスは慌てて呪文を唱えて小さな炎を出し、ブランデの手元を明るく照らした。
「それから、厄介な情報が届いたからそれぞれ地区の者達に通達してくれ。ステグ地区でリーパの幼木が発見された」
ブランデの言葉に、室内は一気にざわつく。
リーパは増えることのできない哀れな植物だが、根を張るとその土地を枯らしてしまう危険な侵略的外来種だ。
強い幻覚作用も持ち合わせている。
それ故に、呪われた植物と呼ばれている。
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