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伝承が真実なら、リーパは遥か昔の南方の魔術師が戯れに造り出した植物で、種を生む親木はこの世に一本しかないのだとか。
何十年かに一度、大嵐の風に乗ってこうして国を跨いで種が飛んでくるらしい。
「誰かリーパを見たことあるかい?」
「ワシは小さい頃見たはずだが…はて。どんな葉っぱだったかいの」
「なんじゃ、痴呆か」
「覚えとることの方が少ないわい」
「静粛に!まず資料を見ろ。さっき回した紙に生態や特徴なんかが詳しく書いてあるだろうが」
「こんなに暗くちゃ読めんじゃろうが」
「そりゃあ、老眼じゃな」
「そういえば昨日ナメクジふんずけたわい。こんなでかいやつ。こんな」
「ふぇっふぇっ」
緊急事態であるにも関わらず、どこかのんびりとした風に聞こえてしまうのは、集まった農夫たちがそこそこ高齢だからであろう。
関係ない話でワイワイと盛り上がる農夫たちを蹴散らすように、ブランデは声を張り上げた。
「とにかく!生えているのを見かけたらすぐ魔学農協に連絡をくれ。触らない・移動しないが鉄則と言われているが、本当は即抜いてもらえるとありがたい。ヒトガタをした球根を完全に土から出し、その辺の石の上に置いときゃ半日で枯れる。持ち帰ろうとか馬鹿なことは考えてくれるなよ」
扱いにくい農夫たちが「ふむふむ」と頷くのを確認し、ブランデはやっと息をついた。
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