22章 闇の終焉(後編)

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・ グレイはルナを抱き締めたまま目を伏せた。 腹を満たす為だけの捕食の行為 ただ、生き血の味に深みを持たせる為だけの欲の儀式 今はそれを抜きにしてただ抱き締めるだけの行いにグレイの胸がじわりと温かくほぐれていく── グレイはルナの髪に頬を擦り付けその感触に目を細めた。 言葉には言い表せない感情── ルナもこんな想いを抱えているからこそ思い悩むのだろうか── グレイはルナを通して色んな感情をゆっくりと心に刻んでいく ただ、ルナを欲しいと思った。 ただ、ルナが可愛く思え そして、愛しいと想い始めた。 グレイは今までの自分の感情の移り変わりを振り返り、ふと頬を思わず緩めた。 好きになっていた── 先にその想いがあったからこそ愛しくなったのだと。 ルナに好きと言われてグレイは初めてその言葉の意味を噛み締めた。 もうそんなにも前からルナのことを手放せないと自分の方が先に虜になっていたことを、グレイは改めて思い知る。 そう認めた途端に尚更愛しさが込み上げていた── 「ルナ──…」 顔を覗き込まれて名前を囁かれルナはグレイのその表情に泣き崩した瞳を見開いていた。
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