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「なんでいつもそんなに意地悪なの…っ…」
「………」
藪から棒な言いがかりにグレイは少し目を見開いてルナを見つめた。
ルナは悔しげに顔を泣き崩し、グレイの胸元を何度も叩く。
「何が気に入らない…」
グレイはルナが叩き続ける腕を捉えルナの顔を覗き込む。
ただ、そうやって問い掛ける声さえも甘く、ルナの胸を疼かせる。
グレイは続けてルナに問い掛けた。
「どうして泣く…」
ルナは目を合わせないまま顔を横に振る。
様子を気にかけながらの低く優しい声音。
なんだかほんとに調子が狂う
ルナは戸惑いそんなことを考えて、見つめるグレイの胸におでこを埋めた。
とても贅沢な感情だ。
ルナは赤い顔をグレイの胸に埋めながら思った。
前は冷たいこの人の仕打ちに堪えられずに逃げた。
なのに今は優し過ぎるこの人に堪えられず逃げ出したくなっている。
とてももどかしい
なのに胸の中には好きが止めどなく溢れてくる──
グレイはしばしルナのその行動を見つめる。
グレイには戸惑うルナが理解できなかった。
好きだという想いは大いに伝わってくるのに何故泣いて拒否をするのか──
意地悪なんて今はしていない。
グレイにはその気持ちは今はない。
ただルナを想い、そしてルナの想いを確かに胸に感じているだけだ。
「ルナ……」
グレイはまた、優しい声音で囁き掛けてルナのつむじに高い鼻先を埋めた。
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