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「うっ…あっ…あ、貴方は彼女のな、なんですかっ…」
「俺か……」
「……っ…」
「俺は婚約者だ──…」
「───…婚…っ」
グレイは驚いて口ごもる男の身体を突き放す。
ルナは、はっきりとそう口にしたグレイの言葉を耳にして不満の表情を驚きに変えてグレイを見つめた。
「わかったなら別の女で用を済ませろ──…」
言いながら呆気に取られた男に背を向けて指を鳴らす。
「グレイ様…お呼びでしょうか?」
「ああ、お前好みの若い精だ──…たんまりあれを吸い付くしてこい…」
グレイは顎をしゃくって命を下す。
目の前には真っ赤な目の覚めるようなドレスを身に纏った妖艶な色気の溢れた女が立っていた。
赤く塗られた唇を指先でなぞり、グレイに指された男を見てほくそ笑む──
人間の男の精を貪る淫魔。キュバスはしなを作りながらルナに迫った男に自分の色香を放ち微笑み掛けた。
「坊や…一人かしら…」
「は、はい…っ…」
「そう…ならこっちへいらっしゃい……朝がくるまで遊んであげる……」
「……っ…は…ぃ…っ」
ツツーっと顎先を細い指でなぞられる。
次第に虜になり始めた男はルナのこともグレイのこともすっかり忘れ、ソファのある部屋へと目眩を伴いながらキュバスに誘われていった──
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