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馬車の中でカイル様に手を握っていただいたところまでは覚えている。
今までの緊張から解放された気持ちになって…
ふと目が覚めると、カイル様のお部屋の天井が見える。
ふかふかのカイル様のベッドで眠っていたみたい…
「…ん」
「アリス!?目を覚ましたか!?」
起き上がろうとすると、カイル様が駆け寄って来て私の背中に腕を添えた。
私は泥まみれのウェディングドレスを着ていたはずだったけれど、綺麗な白いレースのネグリジェを着ていた。
「私…」
「丸1日眠っていたんだ…これを飲め」
カイル様はベッドの脇の小机に置いてあった水差しを私の口元に当てて飲ませてくれた。
「んッ……ありがとうございます…カイル様にこんな事させてしまって申し訳ございません…」
「婚約者が衰弱しているのだから当たり前の事だ。腹も空かせているだろう?今、食事も用意させるからな」
カイル様は水差しを置くと、部屋の外にいる兵に声を掛けてすぐに戻って来てくれた。
…私がカイル様の婚約者?
先日の事を思い出す。
あの時は、意識も朦朧としていて…どうしてカイル様は私なんかと…?
カイル様はベッドに腰を掛けると、私の手を握った。
「大分疲れきっていたようだな…あの家に戻ってから辛かっただろ」
「あの…私……その……カイル様と…ごめんなさい…混乱してて…」
「あぁ。そうだったな…もう一度言おうか。俺と結婚してください」
小さい頃からずっと大好きだったカイル様にそんな事を言って頂いて嬉しくないわけがない…。
でも…
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