第一話 1月

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そんなマロンくんには 一緒に暮らしている 穴掘りパートナーがいます。 ビーグル犬のグレープちゃんです。 グレープちゃんは、 マロンくんより5歳年上です。 とってもすばらしい 穴掘り技術を持っている 美しいメス犬です。 だけどマロンくんは、 最近グレープちゃんに 不満があります。 トウが立ってきたグレープちゃんは、 近頃疲れやすいのです。 毎日穴掘り遊びに付き合ってくれません。 それにこのまま一緒に暮らし続けると、 グレープちゃんと 骨を埋めなければならないと いう危機感もあります。 世の中にはまだまだ、 マロンくんが遊んだことのないような、 すばらしい穴を持つ、 若くて美しいメス犬がたくさんいます。 なのにどうしてこんな使い古した年増犬と、 生涯をともにしなければならないのでしょう。 「どこかに若くて可愛くて、  毎日でも穴掘り遊びに付き合ってくれる、  元気なメス犬はいないものかなぁ。」 マロンくんは、 いつも新しいメス犬を求めているのです。 一匹でも多くのメス犬と 穴掘り遊びをすること。 これがマロンくんの 生きる意味なのです。 そんなマロンくんは、 グレープちゃんに内緒で通っている、 社交場があります。 ここではいろんな犬たちと、 情報交換したり、 手紙のやり取りができます。 同じ趣味を持つものどうしで、 コミュニティを作れます。 マロンくんは、 ここで知り合ったメス犬と 何度か穴掘り遊びをしたことがあります。 もちろんグレープちゃんには 秘密です。 いつ、 どんなメス犬が現れてもいいように、 マロンくんは この社交場のチェックをかかしません。 あるときこの社交場の友人が、 トロピカルの国に住む、 パグ犬のバナナちゃんという メス犬を紹介してくれました。 バナナちゃんは、 マロンくんより10歳も年下です。 まだ幼さの残る かわいらしいメス犬です。 バナナちゃんの手紙には、 あどけない文字で、 つたない言葉が綴られていました。 トロピカルの国は遠いですが、 種を蒔いて損はありません。 バナナちゃんはいつか、 マロンくんの住む ミヤコの国に来たいと 手紙に書いてます。 上手くいけば、 穴掘り遊びをさせてくれるかもしれません。 マロンくんはバナナちゃんと、 バナナちゃんの手紙が すっかり気に入りました。 そこで お手紙交換を 始めることにしました。
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