「死にたいって思ったんだ」

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学校の屋上はとても暑かった。床に張ってあるタイルは太陽の光を反射して熱を持っている。真夏の蒸し暑さはいつも耐えきることができないほど強く、スリッパの裏側を溶かしてしまいそうな気さえする。 僕は一人でのんびりと昼食を取っていた。どうして一人で食べているのかわからないという人もいるだろうけど、まず言っておくことは、僕には友達がいる。まわりの人たちに比べると少し少ないけど、僕にだって会話できる人たちが何人かいる。登校してからホームルームまでの時間はしっかりとグループで過ごすし、廊下ですれ違えば挨拶もする。もちろん冗談だって交わす。だけど、たまに一人になりたいと考えてしまうことがある。胸の奥がきゅうと締まり、まわりにいる人たちがいつもとは別人に見えてしまうため、逃げるように屋上へ向かう。最近はそうなることが増えてきていて、授業中に抜け出すということもある。 そして、今は昼の授業が始まって、まだまだ生徒がノートに向かって黒板の文字を写している時間だ。僕は胸の締まりで屋上にいる。 屋上へは案外簡単に入ることができる。円柱状のドアノブには鍵がかかっているんだけど、ちょっと捻り方を工夫すると簡単に扉は開く。また、鍵を閉めるのもドアノブの捻り方を変えるといいだけだ。昔は屋上の扉の開き方を知らなかったので、踊り場で時間を過ごしていたんだけど、何もやることがないときにドアノブを触れていたら、このことに気がついた。そのときの感動はとてもすごく、例えを挙げるなら、海外旅行で飛行機から降りたあの瞬間と似ている。いつもと違う空気、違う景色がお腹のちょっと上辺りを重くするあの感じ。 それからはよくここで過ごしている。丁度校舎からは見えない場所になっているのでバレることはないし、僕の住んでいる町の景色を眺めることができるので、気分転換にもぴったりの場所だ。もしも僕を見つけることができる人がいるとすれば、その人は双眼鏡でも使わないと難しいだろう。
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