「死にたいって思ったんだ」

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ここを降りるのはチャイムがあと2回なってからにしよう。もともとお腹が弱いからトイレにこもっていたことにしておけば、問題はないはずだ。僕は人よりも肌の色が白いので、少し病弱に見えるらしい。それも相まって僕の体調に関する嘘は真実に聞こえやすい。 それまではこの場所で風を感じながらゆっくりと時間を過ごそう。僕は雨風で錆びてしまった緑色のフェンスに背中を預けて擦るように座る。しゃらしゃらと鉄と骨が擦れる音が響く。遠くでは小さく自動車のクラクションが聞こえた。 2 ふと気がつくと夕方になっていた。西日が僕の顔を照らしていたので目が覚めたらしい。少し変な体勢で眠っていため首の筋辺りが少し痛い。炎天下の中眠っていたため喉が乾いていることに気がついた。口の中は唾液が無くなり、細かい泡ができるだけだ。咳払いをして立ち上がる。軽く汚れたズボンをはたくと、目を擦って校舎へ戻った。 階段をゆっくりと下りる。夕日の当たった校舎は薄暗く、影ができている部分にはまるで誰かが潜んでいるのではないかというくらい暗闇だった。窓からはホームルームを終えた生徒たちが校門へ向かっている姿が見える。隅っこの方には部活動に励む生徒たちもちらちらと見えている。 「なんだか幽霊になったみたい」 僕は頭の中でそう呟いた。校舎には人影がなくしんと静まっているのに、手の届かない場所にはたくさんの人たちが言葉を交わしながら動いている。幽体離脱したような感覚に陥る。
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