「死にたいって思ったんだ」

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それから僕は普通に下校して家へ帰った。自宅では母親がご飯を作っている途中で、においから揚げ物だということがわかった。僕は玄関を上がるとそのまま2階にある自室へと向かった。広さで言えばおよそ5畳半程度の部屋が僕のテリトリーである。ベッドの上に通学バッグを放り投げると、そそくさと部屋着に着替えて勉強机に座る。 僕が眠っていた間にはどんな授業があったんだろう。なんて気にもしていないことを考えてみたが、それだけでは夕飯までの時間を潰すことができそうになかったので、父の部屋から持ち出した小説を読んでみることにした。 父は仕事で忙しく、家に帰る時間もかなり遅いのだが、かなりの読書家である。読んでいるジャンルなんかはバラバラなので、何が好みかはわからないけど、父の部屋には壁一面で収まりきらない程の本が並んでいる。もうすぐ二面目に入ろうとしている本のために、窓を埋めようと考えていると聞いたことがあるが、母はそれに断固反対しているようだ。 部屋が暗いと本の虫も居所が悪くなる。母は父に対してよくその言葉を投げ掛ける。意味はよくわからないけど、何となくニュアンスで理解できる言葉なので、父の顔を見るとその言葉が頭をよぎる。 いま僕が読み始めようとしているのはたぶんミステリーの小説だと思う。表紙には女性が写っていて、その回りを星座の生き物たちが囲んでいる。あまり難しい文章は得意ではないけど、案外読みやすく感じるため、短時間でぱらぱらとページを進めていった。
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