84人が本棚に入れています
本棚に追加
「それより君に、これから重大な話があるんだ」
それだけ伝えると、きゅっと可乃子の手を掴み、近くにある公園へと連れて行った。
・ ・ ・
公園に誰もいないことを確認した後、弥美彦は可乃子に話だす。
「君のことは知ってるんだ。お金に困ってるんだろう?」
「そ、それは……」
「だったら、玉の輿に乗る気はない?」
「え? それって……」
「そう。俺と結婚しよってこと。ちなみに俺、○○企業の社長息子なんだよね」
その後、沈黙が流れた。その間、五分。
五分後になると、可乃子は小さく俯いた。
「お金は確かに無いし、お気持ち嬉しいです。けれど、私貴方のことを何も知らないし……」
「俺は知ってるよ?」
「え?」
「君が何時に起きて、どんな仕事して、遠くにいる家族に迷惑かけないように毎日電話かけて、料理はなるべく安い食材だけ使っていること。そして、お風呂に浸かるとき、少し色っぽい声を出すことも」
これを聞いた可乃子は、顔を赤くさせるどころか、徐々にその顔を真っ青に変えていった。
「……どうして、そんなこと知ってるの?」
「あ、え、えっと……」
「じゃあ、今まで送って来たあの食べ物の入った段ボール、全部貴方の物!?」
「そ、それは……」
「つまり貴方、ストーカーだったの?」
返す言葉も無かった。弥美彦は思わず目を逸らす。
すると、可乃子が弥美彦の目を逸らした先に移動し、声をかける。
「……それで、本当にお金に困らないのよね?」
「ああ、それだけは絶対にない」
「分かった」
「……え?」
「分かったよ。貴方と結婚してあげる」
それは想定通りの答えだった。だったはずなのだが、あまりにもあっさりと答えられ、弥美彦としては一瞬戸惑ってしまった。
が、それも一瞬のこと。すぐに笑顔になると、彼女へ口づけをした。
「ん、んぐっ! な、何すんのよ!!」
バチンッ!! 可乃子は弥美彦の頬に思い切りビンタした。
だが、弥美彦は悪びれる気も無いような笑顔だ。
「だって結婚してくれるんだろ!? もう君と僕は結ばれているんだ。もう、君は僕の物なんだよ……」
そう言った弥美彦の表情は、恍惚としていた。
そんな彼を見て、可乃子は悲しげな顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!