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「それより君に、これから重大な話があるんだ」  それだけ伝えると、きゅっと可乃子の手を掴み、近くにある公園へと連れて行った。  ・ ・ ・  公園に誰もいないことを確認した後、弥美彦は可乃子に話だす。 「君のことは知ってるんだ。お金に困ってるんだろう?」 「そ、それは……」 「だったら、玉の輿に乗る気はない?」 「え? それって……」 「そう。俺と結婚しよってこと。ちなみに俺、○○企業の社長息子なんだよね」  その後、沈黙が流れた。その間、五分。  五分後になると、可乃子は小さく俯いた。 「お金は確かに無いし、お気持ち嬉しいです。けれど、私貴方のことを何も知らないし……」 「俺は知ってるよ?」 「え?」 「君が何時に起きて、どんな仕事して、遠くにいる家族に迷惑かけないように毎日電話かけて、料理はなるべく安い食材だけ使っていること。そして、お風呂に浸かるとき、少し色っぽい声を出すことも」  これを聞いた可乃子は、顔を赤くさせるどころか、徐々にその顔を真っ青に変えていった。 「……どうして、そんなこと知ってるの?」 「あ、え、えっと……」 「じゃあ、今まで送って来たあの食べ物の入った段ボール、全部貴方の物!?」 「そ、それは……」 「つまり貴方、ストーカーだったの?」  返す言葉も無かった。弥美彦は思わず目を逸らす。  すると、可乃子が弥美彦の目を逸らした先に移動し、声をかける。 「……それで、本当にお金に困らないのよね?」 「ああ、それだけは絶対にない」 「分かった」 「……え?」 「分かったよ。貴方と結婚してあげる」  それは想定通りの答えだった。だったはずなのだが、あまりにもあっさりと答えられ、弥美彦としては一瞬戸惑ってしまった。  が、それも一瞬のこと。すぐに笑顔になると、彼女へ口づけをした。 「ん、んぐっ! な、何すんのよ!!」  バチンッ!! 可乃子は弥美彦の頬に思い切りビンタした。  だが、弥美彦は悪びれる気も無いような笑顔だ。 「だって結婚してくれるんだろ!? もう君と僕は結ばれているんだ。もう、君は僕の物なんだよ……」  そう言った弥美彦の表情は、恍惚としていた。  そんな彼を見て、可乃子は悲しげな顔をした。
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