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「変人の相手」
まあすでに変としか思えない人物だ。それに科学者狩りを狩る奴がいたなんて驚きである。そんな反撃、誰も予測していなかった。
「いい加減、その装置から離れてちょうだいよ」
瑛真は屈んで網の調子を確かめる路人にそう注意する。網が破れていないか心配なのだ。
「遊んではいないよ。こいつを捕まえてくれって頼まれているんだ。それに瑛真がやれって言ったことだろ」
すると網を片付け始めた路人はむすっとそれだけ反論した。今一つ状況が見えてこない。しかしまあ、逃げる理由は徐々に見えてきた。
「まあいいわ。一先ずここのシステムを教えておきましょう」
瑛真は契約しちゃったしねと暁良にタオルを渡しながら話し始めた。よく考えたら目くらましに食らわされた粉まみれだったのだ。暁良は有り難く受け取って顔と頭を拭く。
「ここ、この部屋は路人の研究室よ。基本は特許収入で路人が好き勝手に研究している場所。でもそれだけでは成り立たないから、ロボットや人工知能、その他諸々のトラブル相談を受け付けて解決しているの。その過程で、間違って科学者狩りを捕まえることも引き受けたってわけ。ほぼあの人の趣味で成り立っている場所よ」
淡々と説明されるここの実態に、暁良はすでに嫌な予感以外しない。要するにここは路人が好き勝手にやっているだけの場所。そういうことらしい。
「あの、そんな場所で俺は何を?」
バイトの入る余地があるのか。まずはそこが謎だ。ついでに瑛真は何をやっているのだろう。路人の恋人だろうか。
「あの人、根本的に片づけが出来ないし、生活がなってないの。それの手助け。要するに路人の世話係よ」
瑛真はそう言って路人を指差した。網を片付けていたはずの路人は、それを床に放置したままパソコンを弄り始めている。
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