第1章

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「興味のままに動くってヤツですか?」  あの網、多分俺の最初の仕事になるんだろうな。暁良はそう思いつつ瑛真に訊く。 「ご名答。寝る以外の行動は常にあの調子だから覚悟して。今もほら」  パソコンを弄りながら、路人はついでとばかりにタブレット端末を操作して何かをやり始めた。同時に出来るのは凄いが、それってパソコンにまとめて出来ないのかともツッコみたくなる。 「はあ」  前任者はきっと、科学者狩りをやっていても良識のある人だったのだろう。だから付き合い切れなかった。暁良は自分も三日が限度かなと思いつつ路人が次々に散らかしていく様を見る。今度はなぜかはんだごてを取り出していた。 「さっき路人さんが何か叫んでいませんでしたか?」 「うわっ」  他に誰もいない。そう思っていたところに別の声がして暁良は驚いた。きょろきょろと見てみると、物で溢れ返った部屋の隅から誰かが出てくる。 「ああ。彼もここで働く一人よ。でもあなたと違って路人の助手。つまり正式に勤めている人」  瑛真は何でも正確に言わなければ気が済まない性格のようだ。これはこれで面倒臭いと暁良はげんなりとする。その間に暁良のいる入り口まで、その助手がやって来た。 「また捕まえてきたの?路人さんも飽きないねえ」  助手は暁良の変わらないくらいの年齢の男子だった。しかしまあ、いかにも理系という空気を漂わせている。冷たそうだし理屈っぽそうだし、ファッションセンスいまいちだしってヤツだ。 「飽きてほしいんだけどね。どうにも楽しいみたい。それはそうよね。歩いているだけで次々と誰かを捕まえられるんだから。鬼ごっこでもやっている気分でしょうよ」  瑛真は後は宜しくと助手に暁良を押し付けた。まだ名乗り合ってもいないのに放置されては困る。 「あの」 「新人。名前は?」  待ってくれと瑛真を止めるより先に、助手がそう声を掛けてきた。何だか言い方も腹立つ。出来ればこいつを狩りたい。
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