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「陣内暁良です」
むっとしつつも答えるしかない。路人の助手ということは、対処法を知っているのではないか。そんな下心もある。
「俺は城田翔摩。まあ、二日持てば大丈夫だから適当にやっといて」
しかし翔摩はいなくなること前提でそれしか言わない。これには暁良もむきになってしまう。
「ちゃんと働きますよ。時給は950円って言ってましたよね。これって結構いいバイトですから」
実際にそんなこと一ミリも思っていないが、暁良はそう意地を張るしかない。
「へえ。労働意欲があるなら最初から科学者狩りなんてしなければいいんだ。科学者を恨むなんて馬鹿馬鹿しいことこの上ないからな」
意地を張られて翔摩はむっとしたようで、そう言い返してくる。どうやら同い年くらいという推測は当たっているようだ。理系でも単純な奴がいるんだとすっきりする。
「それで、一色さんってどんな人なんですか?」
今までのムカつきが今のですっとしたところで、暁良は改めて路人について訊く。正直、変人以外の情報が得られていない。
「必ず路人さんって呼べよ。名字で呼ばれるの嫌いだからな。年齢は27歳。4歳の時に飛び級で大学に入り、すでに理学、工学の博士号を持っている人だ。天才的な頭脳を持ってはいるが社会性が破滅的にないせいで、自由に生きるためにここで研究している。そういう感じかな。ここまでで質問は?」
翔摩が一旦言葉を切って確認をしてくる。が、質問すべきことが多すぎてどこから手を付けていいのか解らない情報だ。
「あの。そういう人でも今の時代、重宝されるんじゃないですか?」
一先ず、社会性がなくても他の仕事が出来るのでは?その疑問をぶつけてみた。
「世の中そんなに甘くないよ。しかしロボットが重宝されているおかげで路人さんや俺のような生きる隙間があるってわけだ。仕事は作ってしまえばいい」
解っていないなと、同い年くらいの翔摩に言われて腹が立つ。が、こいつも社会性がないってことは理解した。
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