第1章

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「それで、世話って何をすればいいんだ?」  そんな天才で変人の相手なんて想像もできないと暁良は訊く。もう路人のパーソナルデータはどうでもよくなった。ここにいる連中はみんな、社会からはみ出している。そういう理解でいいらしい。 「路人さんの行動をよく見て、それに合わせて行動。それだけだ。こういうのって、意外に機械に出来ないことなんだよな」  溜め息交じりに翔摩が説明してくれるが、はっきり言って内容はない。しかし路人の手助けが業務という瑛真の言葉が正しいということだ。 「寝る以外はあの調子ねえ」  今は、どう考えても遊んでいるよなと暁良は路人を見て呆れた。手にはへんてこな姿のロボットがある。どうやら自分で組み立てているものらしい。 「寝るのは二時間だけだ。だからまあ、学校に行く以外の時間の総てを取られることになるぞ」 「え?」  それは労働法違反だろうと暁良は翔摩を見るが、どうやら冗談ではなさそうだ。顔に笑みが一切ない。 「気に入られればな。連れて来てすぐは誰だって気に入る人だけど」  お前にやる気があっても無理かもよと、翔摩はそれだけ忠告してきた。それはそれで困るのではと思うも、今までそれで成り立っていたのだろう。だから二人してすぐに逃げると言えるわけだ。 「気に入られる、か」  すでに暁良がいることなんて忘れているような路人に、それは無理かもと思ってしまった。まあ、成り行きでバイトになっただけ。本当に2・3日付き合えばいいだけなのかもしれない。でも、何だか気になってしまった。 「うわっ」  路人がパソコンの横に置いていたペットボトルを倒し、床にお茶がばら撒かれる。翔摩は早速仕事だぞと教えてくれた。まさかの網の片づけではなくお茶の片付けからだ。
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