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「ん……ちょっとね。今日、稔空いてるかなぁって」
にこ、と笑う恵美璃が可愛くてぽーっとみとれていたら、
「あぁ……。まぁ空いとる、」
「ちょっ、稔! 今日オレと飯食う約束ッ」
「ばか、空気読めって」
「いでっ」
今藤に軽く頭を叩かれて涙目で唇を尖らせるしかない。
「あ、そうなの? ごめん、じゃあ今度でいいよ」
「……そうか?」
うん、と何もなかったかのように笑って去ろうとした恵美璃の袖をそっと引いた。
「いやいや、待って待って! じゃあさ、一緒に食えばいいじゃん!」
「は? お前何言うて……」
「だからぁ、エミもさ、一緒に食えばいいじゃんって」
「……」
「……渉、たぶんそれ、お邪魔虫ってやつ……かな」
その場に一瞬の沈黙が落ちた後、苦笑いした颯真がオズオズと呟き、今藤がうんうんと頷くのを見て、あれ? と首を傾げる。
「だって飯は大勢で食った方が旨いじゃん」
「いやまぁ、それはそうなんだけど……」
「お前は今日は遠慮してやれよ」
「だってオレの晩飯……」
何食えばいいんだよ、と呟いたら、はぁぁぁ、と大きなため息が聞こえた後で稔にわしわしと頭を撫でられた。
「お前の今日の晩飯はお好み焼きの予定やったからサクッと作ったるし、持って帰って食え」
「えぇぇぇ~……一人で食っても旨くねぇじゃん~」
「作ってもぉといて旨くないって何様じゃお前は」
「だからぁ、稔のお好み焼きはオレ史上最高に旨いけど、一人で食っても旨くないって言ってんの」
「……」
「だからさ! 三人で食えばいいじゃん! 大丈夫、食ったらすぐ帰る! 邪魔しないから! な!」
ニカッと笑って見せたら、稔が盛大な溜め息を吐いた。
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