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「稔はエミと付き合ってる訳じゃん? 颯真も彼女いるし。なんかさ……例えば予定とかが被ったらさ、彼女を優先するんだろうなぁって。……思ったらさぁ……なんかさ~……淋しいなぁって」
まるで幼児の駄々のような渉の呟きに
「別にエミとは付き合ってへんぞ」
思わず放ってしまったその一言に、渉が目を剥いて食いついてくる。
「っ、はぁ!? どういうことだよそれ!? おまっ……おまっ……お前はエミとでもエッチすんのか!!」
「あほかっ! 声がデカイねん! そんなんやからいつまで経っても童貞なんじゃボケ!」
べちこん、と勢いよく頭を叩き下ろす。しかも『エッチ』ってお前は小学生か、と心の中で付け足しながら、うるさい口をぎゅうぎゅう抓り上げた。
「いひゃい! ふぁなへ!!」
「エミとはただの友達やし、することしたかどうかは想像に任せるけど、友達とはせぇへんぞ」
「わふぁっふぁ! わふぁっふぁはら! ふぁなふぇっ」
意外にモチモチとよく伸びる口から指を離して、いてぇ、と両手で頬を撫でる渉を睨む。
「だいたいな、相手の合意がなかったらすること出来へんねんから、勝手な想像でやいやい言うな。エミにも失礼やぞ」
「わぁかったよぉ、……いてぇ……」
痛みで涙目になりながら上目遣いでごめんと謝られてモゴモゴする。別に、と呻くように吐き捨てたら、渉からそっと視線を外した。
その先にいた颯真が意味深な笑みを浮かべていたけれど、気付かなかったフリで視線を俯けた。
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