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一人で飯食うの淋しいじゃん、と笑った渉に、お前はガキか、と断って帰らせることも出来ずに家に上げてしまった自分もまた、危機感より淋しさが勝ってしまったのだから子供だったのだと思う。
結局のところ酒に強くなるという解決策にもなっていないような手段で乗り切ろうとしているが、
「な~ぁ~、稔~」
「……なんや」
「今日泊まってっていい?」
「…………」
こんな風に不意打ちで、しかも上目遣いでねだられて──堪えた自分を誉めてやるしかない。動揺の名残を呆れに似せた溜め息で逃す。
「……ホンマにお前は」
「だって帰るの面倒くせぇんだもん」
ふわぁ、とあくびをする渉の皿は既に空だ。こちらがつらつらと想いを馳せている間にも黙々と食べ続けていたのだろう。
「しゃあないやっちゃな。……朝ちゃんと自分で起きろよ」
「やった、サンキュ」
へへへー、と小さな子供のように笑った渉が、こてん、と机の空いていたスペースに頭を載せる。
「ここで寝んなよ」
「わかってる」
むにゃむにゃ呟いたくせに、そのまま眠ってしまうのは最早デフォルトだ。
「……くそ」
幼い顔付きで眠る顔は、恐ろしいくらいに可愛い。渉の寝顔から視線を無理やり引き剥がしたら、残っていたお好み焼きを全部頬張った。
さっさと後片付けをして寝てしまった方がいい。風呂にはもう入ってあるし、このまま食器だけ洗ったらベッドに入ろう。
そう決めたらモガモガとお好み焼きを飲み下して、二人分の食器をまとめてキッチンに向かった。
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