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「オレ、お前のこと好きやねん」
「なんだよ、言いたいことってそんなことか? オレだって好きだよ」
何言ってんだよと笑った渉に、ちゃう、と声を絞り出す。
「そういうのと、違う」
ぐい、と胸ぐらを掴んで引き寄せた渉の顔に自分の顔を近付けて、未だにキョトンとしたままの渉に呻くように言葉を投げる。
「キス、……してまうぞ、このまま」
「ぇ……?」
「そういう意味や」
「っ、だ、って、……オレら、男同士だし……っ」
あからさまに狼狽える渉に少しだけ傷付きながらも、やけくそな気分で笑い返した。
「そぉや、男同士や」
「だったら……ッ」
「そんなん、オレが一番よぉ分かっとぉわ。せやけど、しゃあないやんけ。好きなもんは好きやねんから」
「い、み……分かんね」
掠れた声で呟いて目を逸らした渉が、オレの手から離れようと身を捩る。
「オレは……オレは、友達だと思ってたよ、お前のこと」
悔しそうに呟いた渉が、オレを涙目でキッと睨む。
「お前は違うかったってことか」
「…………友達や。そうや、友達や。知っとるわ、そんなもん」
「だったらなんで!」
「しゃあないやろ、好きになってもぉたんやから」
潤んだ目で睨み付けられて、勘違いするなよと自分に言い聞かせながら首を振る。
「オレやってずっと思てたわ。……お前は友達やって。……こんな好き、迷惑になるだけやって……ずっと思てたわ。せやけど、消せへんかったんや」
情けなく涙を噛みながら絞り出した言葉を、渉は顔を逸らしたままで聞いている。その唇は、引き結ばれたままだ。
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