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「笑いすぎだっつんだよお前は。ホント失礼なやつだな」
怒っていた声は、次第に呆れ声に変わって
「ま、そんだけ笑えるくらい元気になってくれたなら良かったよ」
不意に驚くほど優しい顔をして柔らかく呟くから、長引いていた笑いの発作を止めてまじまじと渉を見つめた。
「………ありがとさん」
「それにしてもお前、よぉこんなんで一人暮らし出来てんな。飯どないしてんねん?」
時間をかけすぎて生暖かい小さなリンゴウサギをしみじみと見つめながら言えば、渉はきょとんと首を傾げた。
「コンビニだってあるし、バイト行きゃまかない出るし。ガッコ行けば学食あんじゃん。なんとでもなるよ」
「休みの日ぃはどないしてん?」
「だから、コンビニあるって。カップラーメンとかもあるし。レンジでチンすりゃ食えるやつもいっぱいあるぜ?」
「体に悪いやろ、そんなもんばっか食うてたら」
眉を寄せて呟いたら、じゃあさ、と渉が無邪気に笑う。
「作ってくれたらいいじゃん」
「は?」
「お前が、オレの分も作ってくれたらいいじゃん、って」
「なに言うて……」
「で、一緒に食えばいいじゃん」
まるで自分が良いことを言ったとでも言いたげにニカッ笑った渉をまじまじと見つめる。
「それでいいじゃん。お前だってさ、一人で食うより二人で食う方が楽しいだろ?」
「…………」
「な?」
相変わらずにかっと笑ったままの渉をしばらく呆然と見つめた後、やれやれと呆れた笑いが零れた。
「……しゃあないな。風邪が治ったら飯作ったるわ」
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