act.3 まだしばらくは今のままで

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 わざと大きめの音を立ててベッドから降りてキッチンに向かう。軽い朝食くらいは食べさせてやるかと冷蔵庫を漁っていたら、 「んぅ? …………あさ?」  こしこしと目を擦りながら、むくりと渉が体を起こした。 「うわ……体いてぇ……」 「だからそこで寝るなて言うたやろ」  バキバキと骨を鳴らしながら腕や首をグルグル回して、眠かったんだよぉ、と拗ねた渉が最後に大きな伸びをする。ちらりと覗いた薄くて白い腹が目に眩しい。 「パンぐらいやったら焼いたれるけど、食うて行くか? お前いっぺん帰らんとガッコ行かれんやろ」 「食う食う! やったぁ! 朝飯~」  両手を上げるガッツポーズの後にぴょんと軽やかに立ち上がった渉が、ペタペタとキッチンに走ってきて無邪気にまとわりついてくる。 「ほーんと、お前っていい奴だよなぁ」  上機嫌な渉の頭をぐいと突き放しながら、ぴょんぴょん跳ね散らかした髪をツンツンと引っ張ってやる。 「呑気なこと言うとるけど、寝癖えらいことなってんぞ。鏡見てこい」 「ぎゃっ、マジかっ」  軽く跳び跳ねて驚きを表現するコミカルさに呆れながら、洗面所にダッシュする後ろ姿を見送って溜め息をひとつ。 「ホンマに呑気なやっちゃ……」  無防備に抱きつきやがってとぼやきながら、むくむくと大きくなろうとした息子を必死で宥めた。
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