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わざと大きめの音を立ててベッドから降りてキッチンに向かう。軽い朝食くらいは食べさせてやるかと冷蔵庫を漁っていたら、
「んぅ? …………あさ?」
こしこしと目を擦りながら、むくりと渉が体を起こした。
「うわ……体いてぇ……」
「だからそこで寝るなて言うたやろ」
バキバキと骨を鳴らしながら腕や首をグルグル回して、眠かったんだよぉ、と拗ねた渉が最後に大きな伸びをする。ちらりと覗いた薄くて白い腹が目に眩しい。
「パンぐらいやったら焼いたれるけど、食うて行くか? お前いっぺん帰らんとガッコ行かれんやろ」
「食う食う! やったぁ! 朝飯~」
両手を上げるガッツポーズの後にぴょんと軽やかに立ち上がった渉が、ペタペタとキッチンに走ってきて無邪気にまとわりついてくる。
「ほーんと、お前っていい奴だよなぁ」
上機嫌な渉の頭をぐいと突き放しながら、ぴょんぴょん跳ね散らかした髪をツンツンと引っ張ってやる。
「呑気なこと言うとるけど、寝癖えらいことなってんぞ。鏡見てこい」
「ぎゃっ、マジかっ」
軽く跳び跳ねて驚きを表現するコミカルさに呆れながら、洗面所にダッシュする後ろ姿を見送って溜め息をひとつ。
「ホンマに呑気なやっちゃ……」
無防備に抱きつきやがってとぼやきながら、むくむくと大きくなろうとした息子を必死で宥めた。
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