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「それにさぁ……なんで颯真が言いにきたわけ? アイツ、オレと直接話すのもヤなのかなぁ……」
「ちがちがっ! 違くて! 稔、今日二日酔いキツそうでさ、さっきも死にそうな顔して座ってたし。……でも渉の顔見たくて出てきたんだって」
「……ホント?」
「ホントホント」
だから泣くなよぉ、と焦った声で慰められてごしごしと目元を拭いた。
「……稔のお好み焼き……」
「うん?」
「めっちゃ美味いから」
「うん、こないだも言ってたね」
「食ってビックリしろよ」
「……うん、分かった」
優しい顔して笑った颯真に、ぽふっと優しく頭を撫でられて、やめろよ、と照れ隠しで振り払いながら、頭をもたげようとした不安の芽を踏みつけて見ないフリをした。
***
大丈夫かな。ホントに嫌がられてないのかな。
そんな風に不安になりながら稔の家を訪ねたのに、颯真に出迎えられて肩を落とした。
「今、稔は手が離せないから」
「? ……あ、いい匂いする」
「焼くの時間かかるからって、先に焼き始めてたんだ」
大丈夫だよ、と笑った颯真に背中を押されて、リビングに恐る恐る足を踏み入れる。
「……うわぁ、すっげぇ……!」
「えぇから早座れ。みんなお前待ちやったんやぞ」
「……悪かったって」
ホットプレートとたこ焼き器が置かれてお皿は足元なのが一人暮らし用のテーブルの悲しいところだが。
ホットプレートにもたこ焼き器にも既にタネが乗せられて、ジュウジュウと美味しそうな音を立てていた。鞄をそこら辺に投げ捨てて、いそいそと座りながら
「オレもくるってやりたい!」
「いいけど、失敗すんなよ?」
絶賛くるっと中だった今藤から先の尖った棒を受け取って、張り切って生地に突き刺す。
「くるっ……てあれ?」
「下手くそ、こうだよこう、貸してみ」
「やだ、もっかいやる」
「あほ、しょーもない。食い物の近くでドタバタすんな。──こうじゃ」
今藤と棒の取り合いをしていたら、すかさず稔の手が頭に飛んで来て、さらりと棒をかっ拐われてくるくると2、3個いっぺんに一瞬で丸くされた。
おら、とドヤ顔をキメる稔は以前と変わらない表情をしていて、ようやく肩から力が抜ける。
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