act.1 誇らしき友情

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「ちょ、タンマタンマ! 待って待って!」 「何がタンマじゃ! おン前ホンマ、素直に謝ったら許したろかな思てたのに! 颯真のせいにすんな!」 「ちがっ、だって!」 「だってもくそもあるか!」  ジリジリと迫ってくる稔に距離を詰められて、オドオドと視線を颯真に泳がせたのに、颯真は両手を上げて我関せずのポーズだ。 「てゆーか! そんなに怒るなら自分で出ろよぉ」  半泣きで正論を叫んだのに、問答無用、とチョップが頭上に落ちてくる。ひらりとかわせば、避けるな、と怒った右足が飛んできた。 「はい、そこまで」  ダメだ食らう、と身構えたところを新たな人影に遮られて恐る恐る顔をあげたら、稔の足を止めてくれた命の恩人が呆れた表情で立っていた。 「今藤~!」  うわぁん、と今藤にすがり付いたのに、ぺいっ、と投げ捨てられて地面に膝を着く。 「ちょっ、なんで投げたの今!」 「うるせ。お前ら暴れ過ぎなんだよ。瀧川も止めろって」 「だっていつものことじゃん」 「瀧川って時々めちゃくちゃドライだよな」  乾いた笑いを浮かべた後で、ハタと我に帰った今藤が腕の時計に目をやって、やべっ、とぼやく。 「早く行くぞ。一限間に合わねぇ」 「ちょっ、待って」  ダッシュで遠ざかろうとする3人の姿に慌てる。転がされたせいで汚れたズボンをパタパタ叩いていたら、 「はよせぇ、オレまで遅れる」  中途半端な距離で立ち止まった稔が不貞腐れたような顔をしている。──この顔は照れ臭い表情(かお)だと分かるくらいには付き合いも長くなった。 「今行くっ」  向こうの方でこっちを振り返っている颯真と今藤も、早く早くと手を振っている。なんだかんだでイイ奴らだ。  ニマニマと顔が緩むのを感じながら、みんなのいる方向へ駆け出した。  ***
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