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起きたら寝た覚えのないベッドの上だったのは、人生で2度目だ。
「ぅわっ!? …………あれ?」
またやっちゃったのか、と飛び起きようとしたのに、強い力に阻まれて上半身すら起こせなかった。
「うるさい」
寝起きで不機嫌な声をだしているのは稔で、オレの体を押さえつけているのも稔だ。
なんで同じ布団で? とパニックになりかけた時に
「…………お前、まさかなんも覚えとらんとか、夢やったら良かったとか……」
恐ろしく低い声が呟くから、頭をブンブン横に振る。
「覚えてる!! 覚えてるし別に夢とか思ってないから命だけは……っ」
「……あほ。そんな怒ってへんわ」
照れ隠しも込みで過剰に慌てて見せたら、稔が優しく笑って優しいデコピンをぶつけてくる。
「……体は」
「からだ?」
「痛いとこないか。腹とか……」
「……大丈夫」
「そうか。ナマでヤると腹壊すことあるからな、気ィつけやな」
ふぁぁ、と大きなあくびをする稔の顔が妙に優しくて穏やかでドキドキするのに、見慣れなくて不気味ですらある。
「…………なぁ……」
「なんや」
「オレさぁ……あのさぁ……お前のことはさぁ……その……好き? だけどさぁ……オレさぁ……その……友達としての稔も好きっていうかさぁ……その……なんつーか……」
「……イチャつくのはベッドの中だけがえぇとかそういう話か」
「ばっ!? そういう話じゃねぇ……っ!」
「うるさい分かっとる。外でイチャつくんは好きとちゃうから心配すんな」
ぐしゃぐしゃとオレの頭を撫でた稔はなんでもないかのようにそう呟いたけれど、瞳はほんの少し淋しそうだ。
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