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「男同士やしな。偏見もあるから、外では気ィつける。……今だけ浸らせろや。こんな日ぃ来るとか、ほとんど奇跡やぞ」
モゾモゾとオレの首筋に顔を埋めた稔が不貞腐れた声を出すのが、ちょっとだけ可愛い。こんな面もあるんだなとなんだか得したような気分だ。
「……奇跡か……」
「そらそやろ。男同士やぞ」
「……なぁ……稔はさぁ、いつからオレのこと好きだったの」
「…………なんや急に」
「いや、急さで言ったらお前の告白のが急だったからな!?」
「……そらだってお前……コクられたとか付き合うとか言うからやな……ほんなら玉砕したれと思うやんけ」
ぶうたれる声が苦々しく震えている。
「お前のことなくしたくなかった。……友達でえぇってずっと思てた。……ほんでも誰かのモンになるかもしれんと思ったら、どうしょうもなくなったんや。絶対無理やと思ってたし、フラれんのも分かってたけど……どうしても我慢出来んかった。なんも言わんまんまで、誰かのこと幸せそうに話すお前の隣におるとこ想像したら、ちょっと拷問みたいやなって」
拗ねた声を取り繕う稔の目はゆらゆらと揺れていて、オレの髪を撫でる指先も微かに震えている気がする。
「いつからかは分からん。……お前はいつでも元気で明るくて、天然で無防備でめっちゃ困ったけど、でも離れられへんかった。オレの我慢が効く限りは傍におれるって信じとった。だから……離れざるをえぇへんようになって、めっちゃ堪えた。……こうなったからには、もう二度と離されへんぞ。お前がほだされただけやったとしてもな」
愚痴めいた口調はいつの間にか熱烈な口説き文句へと変わっていて、顔がポカポカと熱い。本当にキザな男だ。だからこそモテていたんだろうけど。
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