act.1 誇らしき友情

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「あぁ、オレも聞いたことある。可愛いよねぇ、ドーテーなんじゃな~い、って」  わざとらしく女子の声真似する今藤はちっとも可愛くなくて、朝に稔から助けてもらった恩も忘れて脛を蹴りあげる。 「イッ、て……おま……脛……っ」  ぐぉ、と悶絶するのを見て、良い気味だ、と多少溜飲を下げたところでチロリと稔の方を見てみる。 「……お前も、なんか聞いてる……?」 「ん~……あぁ……確かに可愛い可愛い言われとるし、童貞説も山のように出とるぞ」 「……」 「否定は出来んて言うといたったで」 「こンにゃろ!」  ニヤリと意地悪く笑った稔に掴みかかろうとしたのに、飯食えアホ、とデコピンを飛ばされて渋々引き下がる。 「ちくしょう……なんでオレだけモテないんだよぉ」 「モテてない訳じゃないと思うけどなぁ? 友達は多いじゃん、渉」 「友達としてはイイやつなんだけどぉ、それ以上に思えないんだよねぇ。だって可愛いんだもん」 「…………今藤気持ち悪い」 「うるせっ」  せっかく完全再現してやったのに、とプンスカ怒る今藤を無視して溜め息をもう1つ。 「あ~……颯真までとは言わねぇからさぁ。せめて稔くらいの顔が良かったなぁ……」 「なんやねんオレくらい(、、、)て。シツレーなやっちゃな」 「だってそうじゃん。颯真みたいに誰がどう見てもイケメンなんて我が儘言わないからさぁ。稔は普通に年相応な男って感じの顔じゃん? 目だって切れ長でなんつーか、イイ男感あるし? しかも背だって高いし。今藤も年相応じゃん。オレなんて、こないだまた中学生に間違われたしさぁ……身長のせいかなぁ……」  あぁあ~、と完全に不貞腐れてボヤいたのに、颯真は完全に苦笑いだし、今藤は扱い酷くね? と若干ご立腹の様子だ。稔はといえば、ふむ、と自分の顎に手を添えて満更でもない顔でニヤついている。  嫌な予感がしたものの、ドヤ顔めいた表情が癪で唇を尖らせたまま顎をしゃくる。
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