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◆◇◆◇
「言霊で性質と名を与えられ、姿を転じたか。しかし、よく機転が利くな、るか」
ホオズキを手に関心する桜祈に、実はね――と持っていた紙袋を見せる。
「これにヒントを得たんだ」
指さしたのは、"芳月堂"という印字。
「これが"ホウヅキ"って読めて、閃いたんだよ。それより、ホオズキ拾って、早く!」
「あ? ああ」
地下鉄が発車する前に回収しようと、二人で慌ててホオズキを拾い集める。
「こんなのどうすんだ?」
屈んでホオズキを拾っていると、不意に頭上から声を掛けられた。
「マド君と乱ちに頼んで、どうにかしてもらうよ」
現在、祖父宅にいるであろう友人二人は、祓いと浄めの力を持っている。彼らにホオズキを託してやっと、この彷徨える魂は解放されるのだ。
「ほーお、どっかの阿呆が、厄介なことに地下鉄で言霊を発動させやがったと聞いて来てみりゃあ、人をこき使う気満々とは、いい度胸だな」
「え? げ、乱ち! なんでここに?」
聞き馴染みのある低い声と、皮肉たっぷりの話し方。もしや、と見上げれば、あからさまに不機嫌な顔をした友人の乱市が拾ったホオズキを、今まさにボクの顔目掛けて落とすところだった。
「『なんで』だあ?! 爺に救け求めたのは、どこのどいつだ。マドカなんて、念の為にって、一駅先で待機中だぞ」
「わあ、ごめんなさい」
「言い合いは後だ。ホオズキは回収した。降りるぞ」
乱市の口撃を受けていると、桜祈が降車を促す。
ああ、助かった。呪よりも、怒る乱市の方がよっぽど怖いよ。
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