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あの背景がどうにも気に入らないのだ。
何の変哲もない単色のわずかに濃淡か
明暗のある人物の引き立て役。その前で
若くもない黒いタキシード姿の男と白い
ウェディングドレスの女が並んだ写真など
想像したくもない。理美にとって写真は
一瞬を切り取るものであり、背景も含め
その一枚に写るものがすべてなのだ。その
意味で如何にもというアングルでなければ
いいと賢一に言ったのだが、
伝わらなかったのだろうか、一枚はその
ありふれた写真を撮るのだと言う。理美が
あからさまに不機嫌な表情をしていたのか、
スタジオの女性スタッフが、
「最近はご結婚時に撮影されなかった
ご夫婦が銀婚式などで撮影なさることが
ありますよ。」
と言った。
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