六月のある晴れた日に

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あの背景がどうにも気に入らないのだ。 何の変哲もない単色のわずかに濃淡か 明暗のある人物の引き立て役。その前で 若くもない黒いタキシード姿の男と白い ウェディングドレスの女が並んだ写真など 想像したくもない。理美にとって写真は 一瞬を切り取るものであり、背景も含め その一枚に写るものがすべてなのだ。その 意味で如何にもというアングルでなければ いいと賢一に言ったのだが、 伝わらなかったのだろうか、一枚はその ありふれた写真を撮るのだと言う。理美が あからさまに不機嫌な表情をしていたのか、 スタジオの女性スタッフが、 「最近はご結婚時に撮影されなかった ご夫婦が銀婚式などで撮影なさることが ありますよ。」 と言った。
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