六月のある晴れた日に

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その言葉に理美は苛立った。確かに 銀婚式を迎えてもおかしくない年齢では ある。だが、理美はこれから賢一と結婚 するのだ。嫌味のひとつでも返そうかと 思ったが、言葉を飲み込んだ。 黙っていたのには理由がある。スタジオ 撮影の後、すぐ目の前の海岸でフォト ブック製作の為にスナップ風の写真撮影も 行うことになっている。その前にこれ以上 不機嫌になりたくない。プロのモデルでは ないから感情を完全には制御できないのだ。 フォトブックを作ると言い出したのは理美 だ。分厚い表紙つきの記念写真に余所 行きの顔で納まるより、彼女は一瞬を切り 取った写真を流れと共にレイアウトして 残したかった。
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