六月のある晴れた日に

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雲ひとつない真っ青な空だった。 「きれいな空。」 理美は思わず呟いた。遮るものは何もなく、 紺碧の海が水平線の向こうまで続いている。 「ああ。」 賢一は頷いた。二人で海を眺める姿も、 呼ばれて振り返った瞬間にもシャッターが 切られた。 女性スタッフが白いサテンを湘南の海の 色に似たブルーで縁取ったリングピローを 差し出した。賢一がリングを手に取り 理美の左手の薬指にはめた。次に理美が 賢一の左手の薬指にリングをはめた。何の 変哲もない甲丸のプラチナリングの内側 にはK to R、R to Kとそれぞれ刻まれて いる。
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