六月のある晴れた日に

3/31
前へ
/36ページ
次へ
「わたしも行く。」 「いいけど、それは別の問題だろ。」 「じゃあ訊くけど、結婚って一体何?」 「今頃何を言い出すんだ。」 「個人の意識の問題でしょう?  あくまでもプライベートじゃない。他人に 知らせる方法は幾つもある。わたしは 静かに当日を迎えたい。」 「…わかったよ。」 賢一は話を続けるのを諦めた。彼女は時に 頑として自分の主張を曲げない。譲る気の ないとき、理美の質問は賢一が言葉に 窮するまで続く。いや、窮しても続く。 彼は遠い記憶を手繰り寄せた。が、思い出 すのは彼女が礼儀正しい後輩だった姿 ばかりだ。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加